【短編ホ】遊びましょ?
山の麓の栗の木は、一切の侵入者をも拒むかのように、枝を広く伸ばしその実を周囲にばらまく。
その木の根本に、全身が傷だらけの少年が横たわっていた。
彼は光の灯らない瞳で、ただ大きな栗の木を仰いでいた。
その手に握られていたのは、彼の手形がついて汚れたブラウスの切れ端。
「うふふ、楽しかったね?」
ゴツゴツとした木の幹に腰掛ける少女は彼を笑って見下ろした。
「次はだれと遊ぼうかな…」
だってお姉ちゃんが迎えに来るまで、退屈だし、寂しいんだもの。
遊びましょ?
この、
大きな栗の木の下で。
END.