L*O*V*E
「いいじゃん、一回だけでいいからさー。ちょっとお茶しに行くだけ!」
「いえ…それはちょっと…」
明らかに困ってる様子の桜さん。
私は必死で涼くんを探す。
「涼くん!桜さんが…お客さんに捕まってます!」
高い棚の本を並べ直していた涼くんを見つけ、そう伝えると…
「…またか。ありがと、真夕ちゃん。」
初めて、涼くんの顔から笑顔が消えたのを見た。
その瞬間、思ったの。
この二人の間に入ろうなんて、無理なんだなって。
涼くんの後をこっそりつけて、隣の棚から見守る私。
涼くんが静かに口を開いた。
「…お客様。どうされましたか?」
「あん?なんだてめーは。客に文句でも言う気か?」
「いえ、そんなことは。本のことを尋ねるのなら結構です。ただ…それ以外のことでしたら、僕が伺います。……こいつは、俺の彼女なんで。」
まるで、ドラマのワンシーンを見ているかのようだった。
お客さんはチッと舌打ちをして、帰って行った。
「…ありがと、涼。」
「ったく、お前は。どこまで俺を困らせる気?」
そんな口の聞き方をしている涼くんだけど…
表情は、ほらね。
安心しきった顔してる。
私はそっと、その場から離れた。