L*O*V*E
あおいちゃんとやらに服の裾を引っ張られながら、私を見ている先生。




「……………陽」



「何、どうしたんだよ?」




立ち止まったままの私のところへ、陽が戻ってきた。





「…………逃げる。」




「は?…って、おい凛!!」





くるっと回れ右して、全速力で走った。




こんなおかしな姉を残しておけるような薄情な弟ではないことはわかってる。






…ほらね。



追いかけてきた。





「おい凛、ストップ!!昔から足だけは速いよなぁ。」




「ごめん…。ちょっと逃げたかった。」





陽は何かを悟ったようだけど、私には何も聞かなかった。




よく出来た弟。




それに対して私は、何もかもがダメダメな女。





技能教習の当日キャンセルって、キャンセル料かかるんだっけ。




でも、そうまでしてでも、先生と二人っきりになりたくなかった。




偽りの“特別扱い”なんて、いらないよ。





私は、逃げたその足で予約パソコンへ向かい、生田先生指定で取っていた予約をすべてキャンセルした。




“講師指定なし”の欄を選択し、パソコンを閉じ…






この複雑な想いにも、蓋をした。



< 16 / 180 >

この作品をシェア

pagetop