L*O*V*E
社内恋愛だから内緒の恋…というわけではない。
社内恋愛は、仕事に支障が出なければ禁止ではないとされている。
実際、付き合ってる人は何人か知ってるし。
でも、俺たちの関係は決して知られてはいけないんだ。
原因は、俺にある。
「由奈…今夜空いてる?」
キスの合間に問いかける。
「会社で名前で呼ぶのはダメ…。」
名前で呼ぶ度に恥じらう由奈。
「いいじゃん。二人っきりなんだし。」
そう言ってまたキスをすると、由奈は観念したように肩の力を抜いた。
「今夜空いてるけど……でも大丈夫なの?」
“大丈夫なの?”
この言葉、由奈に何度言わせてしまっただろう。
俺たちが密会する約束をする度、彼女は俺に“大丈夫なの?”と問いかける。
「今夜は大丈夫。残業で遅くなるって言ってあるから…」
そう言って、由奈のサラサラの髪に左手で触れながら…
その薬指に輝くリングを自分で見ては、いっそ今すぐ外して捨ててしまいたい衝動に駆られるんだ。
そう…
俺は、既婚者だ。