L*O*V*E
「私は大丈夫だから、先に行って?」
「…ああ。また連絡する。」
裸のままの由奈を置いて、部屋を後にする。
…いつもそう。
いつも由奈は笑いながら“私は大丈夫”って言うんだ。
全然大丈夫な顔、してねえのに。
結婚というしがらみが、俺たちの仲を否応無く引き裂いて行く。
ただ、俺の勝手なワガママを言わせてもらえるとしたら…
たった一度でいい。
たった一度でいいから“行かないで”って引き止めて欲しい。
“行かないで”
“帰らないで”
“私を一人にしないで”
そう言って、俺を困らせて欲しい。
「…なんて、バカだよな…俺……」
俺を困らせるようなこと、由奈は口が裂けても言わないだろう。
正確に言えば、俺と妻の関係を壊すようなことは絶対しない。
彼女は、そういう女性。
だからこそ、時々思うんだ。
俺は、ただ由奈を苦しめてるだけじゃないかって。
愛し合ってる、なんて思ってるのは俺だけで…
由奈にとってこの関係は、ただ苦しいだけの関係なんじゃないか…って。