L*O*V*E
「おかえり。」
家に着いたのは、12時近くだったのに。
「佐里…起きてたのか?」
妻は俺を待っていた。
佐里は微笑みながら俺のネクタイに手をかける。
「もちろん、あなたの帰りを待ってたの。……抱いてほしくて。」
そう言って、シュルっとネクタイが外され、一番上のボタンを留めていなかったから、鎖骨が露わになった。
そこに、佐里の指先が触れる。
「待ってたのよ?ずっと…」
「佐里…」
俺には、決めていることがある。
由奈を抱いた日には、佐里を抱かないと。
佐里を抱いてしまった日には、由奈と連絡を取らないと。
だから…
「ごめん、佐里。待っててくれたの嬉しいんだけど、寝不足で疲れてるんだ。…ほんと、ごめん。」
この手の誘いを断るなんて、男のすることじゃないよな。
「そっか…そうだよね。私こそごめんなさい、ゆっくり休んで…?」
気丈に振舞ってくれる佐里の笑顔が、痛々しい。
佐里は、悪くない。
悪いのは、この俺。
身勝手な俺のワガママのせい。
「ごめん、佐里…」
懺悔の気持ちを込めての、キス。
今日はこれで勘弁してくれ。
由奈との甘いひとときの余韻に、もう少しだけ浸っていたいんだ。