L*O*V*E
「佐伯部長、お騒がせしてすみませんでした。」
「よかったのか?戻ってきて。」
すっかり3人とも仕事を再開している。
佐伯部長の言葉に、頷く。
「はい。残業が続くことは元々伝えてあるので。」
そう言いながら、横目で由奈を盗み見る。
黙々と仕事に取り組んでいて、相変わらず表情が読めない。
…とにかく今は仕事だ、仕事。
山のようにあるプロジェクトの業務を、とにかく片っ端から片付けていった。
「もう10時過ぎたかー!さすがに今日はこれくらいにして、続きは明日やろうか。」
佐伯部長の一言で、時計を見る。
本当だ、10時15分。
「じゃあ紗英、帰るぞ。」
「ちょっ…部長っっ!!」
仕事モードをオフにした途端、部長の甘々モードがオンになるようだ。
…羨ましいよ、この二人が。
なんて思っていたら。
「じゃあ俺たち帰るから、最後戸締りして守衛さんに鍵返しておいて。…あ、北原。もう遅いから岬のこと送ってやれよ。」
そう佐伯部長は言い残し、サッと帰ってしまった。
「…私一人で帰れますから。課長も早く帰ってあげてください。」
コートを羽織りながらぶっきらぼうに放たれた言葉。
二人っきりになっても、上司と部下の関係を崩さない由奈。
でも…心のこもってないその言葉は、本心じゃないってすぐわかるよ。
「送る。何かあったら心配だから。」
そう言って、無理やり由奈とタクシーに乗り込んだ。