片恋スクランブル
「スイマセン……それたぶん私の眼鏡です」
「え?あんたの?」
目の前でぶら下げられている、眼鏡……だったモノに手を伸ばした。
「悪い……俺踏んじまって」
表情は見えないけど、申し訳なさそうな声音は伝わる。
「いえ、落としちゃったのはこちらなんで気にしないでください。」
言いながら、ハンカチを取り出し、眼鏡をくるんでバッグにしまった。
「でも、それないと困らないか?」
心配そうに声をかけてくれる。
好い人だなと思った。
だから、よけいもう迷惑かけたくなかった。
「ねぇ、時間ある?」
「は?」
返答をしたつもりはないのに、気付くと私は目の前の誰かに手首を握られ、引き寄せられていた。
「弁償するから、付き合って」
「は?いえ、別にいいですからっ!」
「いいから。眼鏡ないと困るだろ……てか、」
言いながら、私の顔をジロジロと眺めている。
「な……なんですかっ?」
無遠慮に見られて、気分悪かった。