片恋スクランブル


「俺以外の……」

御園生さんの手の力が強くなる。

肩が痛い……。

「他の男に見せたくないんだよ!」

まだ言うか!

「見せませんよ!だから、タクシーで急いで帰ろうとしてるんじゃないですか!」

タクシーなら、人と会わず家に直行できるから……なのにそのタクシーを帰したのは御園生さんでしょう?

「このバカ!アイツは男だったぞ?」

は?

御園生さんが本気で怒鳴ってるけど、言葉の意味に困惑してしまう。

「アイツは男だったぞ?」と御園生さんは言った。

アイツって誰?

八木さんのことじゃ……ないのよね?

私、他に誰と会ったの?

「御園生さん……アイツって?」

考えても分からなくて、御園生さんに尋ねる。

「アイツだよ!あの運転士!」

御園生さんの言葉に、唖然とした。

運転士……?

ちょっと!!!

「御園生さんっ、運転士さんまでダメとかなんですかぁ!」

呆れてしまった。

御園生さん本人は「しまった」と顔をしかめる。

そんな御園生さんを見ていた私は、思わず……。

「ぶっ!」

我慢したんだけど、これでも。

おかしすぎる。

私はたまらず噴き出してしまった。

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