片恋スクランブル



我慢していた反動で、私はその後しばらく笑い続けた。

「もぉ……ダメ、おかしすぎですよ」

涙、出てきた。

「勝手に笑ってろ、」

御園生さんは不機嫌だったけれど、それでも笑い転げる私を見つめる目は、何故か優しく感じた。

本当は泣きたかった。

今日位は。

確信めいたものはあった。だから、八木さんから菅谷さんの気持ちを聞かされた時、やっぱりと思って納得したつもり。

二人を応援しようと思ったのも本当。

でも、簡単じゃない。
ただ見ているだけの頃なら、やっぱりねで終われてた。

こんな風に痛みを感じることも少なかったはず。

でも、一歩近付いてしまったから。

挨拶を交わしたり、他愛ないお喋りをしたり……抱き締められたり……。

近付けて嬉しかったはずなのに、見ているだけの頃なら、こんなに苦しくなかったのにとも思う。

勝手だよね。

だから、今日くらいはあのまま帰って思い切り泣きたかったんだ。

それなのに、今の私は笑ってる。笑えてるんだ。

自分でもびっくりだよ。

御園生さんに会わなかったらきっと今みたいに笑えなかった。

……もしかして。

わざと?

泣きそうな私の為?

笑わせてくれたのかな……?

まさか、ね。

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