片恋スクランブル
「御園生さんって、分かりにくいって言われません?」
目尻に滲んだ涙を拭いながら、御園生さんに向けた言葉に、彼は「うるせぇ」と短く吐き捨てため息ひとつこぼして笑った。
直後に見えた、ホッとしたような優しい目を見た瞬間、
トクン、
何故か、鼓動一つ、いつもより強く胸を打った。
「笑ってろ」
私の頭をポンポンと叩く。
まただ。
いつも、まるで子供をあやすように頭に触れる御園生さん。
私のこと、手のかかる子供みたいに思ってるのかな?
それに甘えすぎているのかな。
「俺も、いつまでもお前のそばにはいられないからな……」
御園生さんの何気無い言葉が、私の胸のはしっこに、小さな波をたてた。
そうだよね。
いくら面倒見がいい御園生さんだって、いつまでも私のことばかり気にしていられるはずないじゃない。
そんな当たり前のことを言われたのに、何故か胸が軋んだ。
そうだよね。
御園生さんには好きな人がいるんだもんね。
いつまでも私なんかの事で煩わせちゃ、その人に悪い。