片恋スクランブル


「心配しなくても大丈夫ですよ?私結構強いんですから」

失恋で凹んでばかりいられないよ。

前に進まないといけないんだから。

私だって大人なんですから、失恋の痛みくらい、うまく隠して見せますよ。

そう思いつつも、何故か御園生さんだけにはうまく隠せないのはどうしてなのかな……。

「そうだな、これからは……大丈夫だよな」

そう言って御園生さんは笑ってくれた。

今迄にも何度も見てる。
その度に救われてきたところもある彼の優しい笑顔が、今日は何故か、酷く寂しく感じてしまった。





既にこの時期定着しつつある、ラウンジでのココアタイム。

私は紙コップに注がれたココアを冷ましながら飲んでいた。

今日辺り、八木さん、菅谷さんに告白するのかな……。

あの日から1週間。

なんの変化もなく、1日1日が過ぎていった。

でも、昨日白川さんを見掛けた時かなり機嫌が悪かったから、多分八木さんが彼女と話したのかと思ったんだけど。

ランチタイムには、再び八木さんの顔を見るようになった。

「橘さん」と声をかけてくれて、他愛ない話もしてくれる。

それだけで心にポッと灯が点った。

やっぱり八木さんの笑顔っていいなって思えた。

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