片恋スクランブル


「ちゃんと頼んである」

「は?」

「あれだよ、花田とかいうおばさんにお前がサボるからうまくやってくれってな」

御園生さんの言葉の意味が分からない。

なにを言ってるんだろう。

「あのおばさん、目をキラキラさせてたぞ……なんでだ?」

それは花田さんが大の恋ばな好きだから。

御園生さんにそんな風に話をふられて、確実に誤解してる。

はぁぁ……。

大きなため息がこぼれた。

「あの……車を会社の手前に着けてください」

「ダメだ!」

即座に断られて困惑する。

「御園生さん?こんな無茶なこと……どうして?」

「俺、ここのところ出張続きでさ、ストレス溜まってんだよ」

「それは……お疲れ様です」

「だから、今日は遊びたい気分なんだよ。付き合え」

はい?

なにを言ってるんだろう。こんな無茶なことを言う御園生さん初めてなんだけど。

「今日の御園生さん、無茶苦茶ですよ?」

「なんだよ、最初からそうだったろ?」

確かに、最初から強引だったけど、でも今日はなんだか違う。

なかなか折れない私に、御園生さんはため息をついた。

「俺、お前の頼みとか聞いてやったよな?」

それ、今言います?

確かに、御園生さんにはお世話になりっぱなしでしたよ?

なにも返せてません……よね。

「……分かりました」

御園生さんに付き合うことにした私は、今日知り合いに合わないことを祈った。

< 110 / 159 >

この作品をシェア

pagetop