片恋スクランブル
「ところで、どこに行くんですか?」
「水族館!……俺、ペンギンとイルカ見てぇ」
まるで子供みたいに、はしゃぐ御園生さんに唖然として見いってしまった。
「可愛い……」
思わず呟いてしまった私に、御園生さんはすねた様子で言った。
「……バカにしてるだろ?」
意外と言えば、意外で。
でも、こんな御園生さんを普段絶対見られないから、なんだか嬉しかった。
「そうだ、舞夏後ろ見て」
「後ろ?」
言われるまま、後部座席を見ると、紙袋が一つ置いてあった。
「なんですか、これ」
「九州出張の土産」
「私に?」
驚いて、御園生さんの顔をジッと見つめてしまった。
「たまたま入った店でお前そっくりのソレがあったから、買っちまったの」
私……そっくり?
「開けてみていいですか?」
小さな土産物袋は、柔らかかった。
取り出してみると、小さな可愛いおサルの縫いぐるみだった。