片恋スクランブル



「ところで、どこに行くんですか?」

「水族館!……俺、ペンギンとイルカ見てぇ」

まるで子供みたいに、はしゃぐ御園生さんに唖然として見いってしまった。

「可愛い……」

思わず呟いてしまった私に、御園生さんはすねた様子で言った。

「……バカにしてるだろ?」

意外と言えば、意外で。

でも、こんな御園生さんを普段絶対見られないから、なんだか嬉しかった。

「そうだ、舞夏後ろ見て」

「後ろ?」

言われるまま、後部座席を見ると、紙袋が一つ置いてあった。

「なんですか、これ」

「九州出張の土産」

「私に?」

驚いて、御園生さんの顔をジッと見つめてしまった。

「たまたま入った店でお前そっくりのソレがあったから、買っちまったの」

私……そっくり?

「開けてみていいですか?」

小さな土産物袋は、柔らかかった。

取り出してみると、小さな可愛いおサルの縫いぐるみだった。


< 111 / 159 >

この作品をシェア

pagetop