片恋スクランブル



どうしてですか?

聞いてみたかった。

彼女でもない、ただの知り合いの私にこんなお土産くれるんですか?

好きな人に……あげなくていいんですか……?

変なの。

本当に貰うべきは私じゃないのに、返したくないと思う自分がいる。

最初出会った時に、与えられた服は、御園生さんが私の気持ちなんて無視して、自分の好みに仕立てるために店員が見繕ったものだった。

だから、どんなに素敵なものでも、私にとってはそれを着ている事が苦痛で仕方なかった。

でも。

これは、御園生さんが自分で選んでくれたんだよね。

私の事を考えながら。

「……気に入らなかったか?」

らしくない、不安げな響き。

「イエ、素敵です」

そっか、とホッとした表情が見えた。

ごめんなさい、御園生さんの好きな人。

これだけ、もらってもいい?

私の為だけに、選んでくれたこのブレスレットだけ……持っていたい。

左手に着けてみる。

……今日だけ、このドライブの間だけ着けていよう。

私だって、ちゃんとわきまえてるよ?

こんなこと、私が御園生さんの彼女だったら、絶対ヤダから。

今日だけ。

選んでくれた御園生さんの優しさに報いる意味で。

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