片恋スクランブル
*
「うわ、可愛い!」
水族館は平日だということもあって、人はまばらで。
ゆっくり見て回ることができた。
ペンギン館の中に入り、ガラスの前にへばりつくようにして見ている私の隣で、御園生さんも優しい目で眺めている。
「ペンギンって、あの歩き方がいいですよね!」
岩場の上をペタペタ歩く様が可愛くて仕方ない。
「いや、水の中を泳ぐあの速さがカッコいいだろ」
あはは。真剣な感想が可愛い。
併設されたペンギン館を見た後、私達は大水槽がある水族館の中を見て回った。
途中見かけた化粧室に行きたくて、私は先にいく御園生さんに声をかけた。
「ちょっと、化粧室行ってきますね」
御園生さんは軽く手をあげて、「了解」と言った。
私は少し急いで化粧室に向かいながら、ふと後ろを振り返る。
休憩スペースになっているガラス張りのフロアで、御園生さんはガラスにもたれて外を見ていた。