片恋スクランブル






「うわ、可愛い!」

水族館は平日だということもあって、人はまばらで。

ゆっくり見て回ることができた。

ペンギン館の中に入り、ガラスの前にへばりつくようにして見ている私の隣で、御園生さんも優しい目で眺めている。

「ペンギンって、あの歩き方がいいですよね!」

岩場の上をペタペタ歩く様が可愛くて仕方ない。

「いや、水の中を泳ぐあの速さがカッコいいだろ」

あはは。真剣な感想が可愛い。

併設されたペンギン館を見た後、私達は大水槽がある水族館の中を見て回った。

途中見かけた化粧室に行きたくて、私は先にいく御園生さんに声をかけた。

「ちょっと、化粧室行ってきますね」

御園生さんは軽く手をあげて、「了解」と言った。

私は少し急いで化粧室に向かいながら、ふと後ろを振り返る。

休憩スペースになっているガラス張りのフロアで、御園生さんはガラスにもたれて外を見ていた。

< 114 / 159 >

この作品をシェア

pagetop