片恋スクランブル
……帰りたい。
今すぐこの場所から、離れたいと思った。
彼らに背を向けて、歩き出す。
黙って帰ったら、きっと御園生さん酷く怒ると思う。
でも……いられないよ。
自然足が早くなる。
気付かれないうちに、ここを離れてしまいたかった。
「舞夏!?」
御園生さんの私を呼ぶ声が聞こえたけど、止まれなかった。
……止まりたくなかった。
追いかけてなんて来てほしくなかった。
それなのに……。
「舞夏……どうした?」
肩を捕まれて、向き直らされた私の目の前に彼の心配そうな表情があった。
そして、もう一つ見えてしまった。
さっきのフロアにいた女子大生達の、蔑む視線。
思わず顔を背けた。
「舞夏?具合悪いのか?」
なおも心配してくれる御園生さんには申し訳なかったけど。
「すみません。ちょっと気分悪くて……今日は帰ります」
御園生さんの顔を見れずに、俯いたまま言った。
「大丈夫か?家まで送るから」
肩を抱き寄せられる。
「やっ……」
思わず、御園生さんの体を突き飛ばしていた。
「……舞夏?」
驚いた顔で、私を見ている。