片恋スクランブル
「ご……ごめんなさい」
言って、彼に背を向けて走り出した。
バカだ。
なんであんな酷い態度をとってしまったんだろう……。
あんな傷付いた顔をさせて。
御園生さんはなにも悪くないのに。
近くにあった、エレベーターに乗り込み、1階のボタンを押した。
小さな箱の中に入り、ホッとした。
ホッとしたら、何故か涙が溢れてきた。
「やだ、止まんない」
ぼろぼろと落ちていく涙が、頬を、顎を、胸を濡らしていく。
掌で拭うのに追いつかない。
もうヤダ。
今日の私、おかしい。
あんな光景、今に始まったことじゃないじゃない。
御園生さんや八木さんの回りにはいつもあんな風にキレイな女の子達がいて、あんな風に他の女の子達に笑いかける御園生さんを、たくさん見てきたじゃない。
今さらなのに。
どうしてこんなに寂しく感じてしまうんだろう。
チン!と、目的地へついたことを知らせるベルが響く。
あわてて涙を拭いながら、開いた扉から外へ足を踏み出した。
「御園生さん!?」
目の前に息を切らし、身体全体で苦しそうに呼吸を繰り返している御園生さんがいた。
額には汗が滲んでいる。
嘘……!
どうして?
今いた3階から、ここまで……まさか階段で?
驚く私に、不機嫌なことこの上ない様子で、御園生さんは私の手首をつかみ、グイッと引いて歩き出す。
テラスに出られる裏口から外へ出て、すぐ側の壁に私の身体を押し付けた。