片恋スクランブル


そういうことだったんだ。

御園生さんは、八木さんと菅谷さんが付き合い始めた事を知って……。

私に、同情したんだ。

「やだなぁ……御園生さんお人好し過ぎですよ」

「……お人好し?」

御園生さんに背を向けて、深呼吸をした。

気持ちを落ち着かせるために。

泣かないために。

「……そうですよ、お人好し過ぎです……」

なんだ。

悩んでバカ見ちゃったな。

御園生さんは出張から帰ってきて、八木さんから聞いたんだ。

だから、私が傷付かないようにこんな風に連れ出してくれたんだ。

確かに、今日は二人の幸せそうな顔を見る心の準備足りなかったかも。

昨日、菅谷さんから聞いたときに、心の準備するつもりだったのに。

家に帰って一人になったら、どうしようもできない虚無感が襲ってきた。

昨日くらいは、飲みにいってもよかったような気もした。

でも、結局飲みにいったところで、酔えない気もしたから、早々に寝たんだった。

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