片恋スクランブル
目的地とされる部屋の前に着いた時、我に返った。
カードキーを挿し込み、開いた扉から私を部屋へ引き入れようとする御園生さん。
「イヤッ!」
右手首の痛みが強くなる。
御園生さんの顔も怖いままだ。
でも、この部屋には入りたくない。
「御園生さん!離してくださいッ……」
私の力なんてたかが知れてる。
御園生さんにとっては、赤子と同じだろう。
でも、いやだ。
身体全体で抵抗する私の耳元に、彼の囁きが落ちる。
「それなら、ここで抱くぞ」
低く、重い、冷めた声音。
鼓膜を震わせ、鳩尾にズンと鉛を落とす感覚。
抱く…………?
なにそれ。
どういう意味?
彼が囁いた言葉の意味が理解できない。
「他人に見られたい趣味でもあるのか?」
蔑むような、視線と声が、私に降りかかる。
愕然とする私を、難なく部屋に引き入れ扉を閉めると、御園生さんは私をその扉に押さえつけるようにして、身体の自由を奪う。
近付いてくる彼の冷たい目と、薄い唇。
逃げるより先に、涙がこぼれた。