片恋スクランブル
触れそうな位近くにあった、彼の唇が、ピクリと震えた。
「俺には、触れられるのもイヤなのか……?」
絶望に近い響きだった。
「…………同情で近づいていたわけじゃない」
御園生……さん?
「ずっと…………」
私の肩に頭を置いて、呟くように言葉を重ねていく。
「ずっと…………好きだったんだ」
好き?
御園生さんが、私を?
御園生さんの私を拘束していた腕の力が抜ける。
「本当は、八木になんか渡したくなかった。協力なんかするつもりもなかった……」
けれど、彼の口から紡がれる苦しげな声が私の身体を縛り付けていた。
「お人好し?……ふざけんな!俺はいつだって、隙を狙っていただけだ……いつでも、お前を奪えるように」