片恋スクランブル
コートを脱ぎ、床に落とした。
ブラウスのボタンを外していく。
一つ、二つ、
指先が震えて思うようには、外れなかった。
胸元のキャミが露になり、躊躇いが指を止める。
でも、一つ深呼吸をして再びボタンを外していった。
床にブラウスが落ちたところで、御園生さんが顔をあげて驚いた様子で私を見つめた。
「……舞……夏?」
彼の声に、今すぐ逃げ出したくなる衝動にかられた。
恥ずかしさで、頭が爆発しそうだ。
「……なに……してる?」
彼の声が聞こえたけれど、彼を見ることは出来なかった。
きっと軽蔑している。
はしたない、浅ましい私を軽蔑の眼差しで見ているに違いないと思った。
でも。
止められなかった。
スカートのホックに手をかけたとき、私の手を止める手があった。
「……いいの……か?」
私を見下ろす御園生さんの目は、困惑と戸惑いと不安に揺れていた。
こんなに自信が無さそうな御園生さんを見るのは初めて。
いつかの電話の時は、声だけだったから。
私、あの時もこんな顔をさせてたの?
彼の首に手を回した。
精一杯背伸びして、彼の耳元で答えた。
「いい……御園生さんになら」