片恋スクランブル
「なんだ?」
「え?」
不機嫌な声に、私の身体はビクッと震えた。
怒らせてしまった?
「ジロジロ見られるの、やっぱり気分よくないな」
「す、すみません」
あわてて謝る。
私の態度ひとつで会社に悪い印象でも与えてしまったら……。
「バカ。俺だってさっきあんたの事見てたろ?気持ち分かったって意味だよ」
……もしかして、怒ってる訳じゃなくて、謝ってくれてる?
視線は前に向けたままで、ふんぞり返っているようにしか見えないけど。
「で、なんでそんなに怯えてんの?……とって食われるとか考えてる?」
「ちが……っ」
頭を激しく左右にふる。
「会社に……迷惑かけたくないし……」
「会社?」
「あ……、」
「なに?あんたうちの会社の人間?……いや、取引先?」
「違いますっ」
「あんたがいた場所……」
察しがついたようだが、御園生さんは首をかしげただけだった。