片恋スクランブル
彼が見えない日々
「ごめんなさい」と呟いて、あのホテルの部屋を飛び出してから、もう2週間経つ。
どうしてあの時「誤解」だと告げられなかったのか、後悔ばかりが私を襲った。
同情なんかじゃない。
好きだから、
好きだと気付いたから、御園生さんに触れたかった。
初めて触れた唇も、
戸惑いながら私の肌に触れていく彼の指先も、
全てが……愛おしくて仕方なかった。
それなのに。
*
「お互いが同情だと誤解するなんて、皮肉だよね」
ココアタイムに私の隣で、コーヒーを飲んでいるのは、菅谷さん。
「アイツ、鈍いんだよな。肝心なところで弱気だし」
珍しく他人への毒を吐いたのは、菅谷さんの隣で同じくコーヒーを飲んでいた八木さん。
この二人、八木さんから告白したのを機に、堂々と職場恋愛真最中だ。
暇を見つけては、二人一緒に過ごしているらしいと、営業部の女子社員の間では専らの噂だ。
ただ、八木さん達が二人で過ごす場所が社食かこのラウンジと言うのが、ちょっとあれだけど。