片恋スクランブル


「御園生の同僚にも聞いてみたけど、有給消化だって急に休み取ってるらしいけど、行き先まではなぁ……」

その場にいた全員が、大きな溜め息をついた。

「……会いたくないんだと思います。」

「橘ちゃん?」

「御園生さんの事、あんな形で傷つけたし……顔も見たくないですよね、」

あの日だけじゃなくて、ずっと、ずっと傷つけてきた。

今までどれほど私は彼を傷つけてきたのだろう?

許してもらえるはずないし、許してほしいとも言えない。

一度だけ。

初めて彼の携帯に電話をした。

彼の姿を見なくなってから、1週間過ぎた頃。

携帯のナンバーを教えてもらったけど、一度もかけたことはなかった。

だってかけなくても、気付けば彼はそばにいたから。

だから、初めて私からかける電話だった。

……つながらなかったけれど。

でも、それが彼の返事だとも思えた。

だから、もうかけられなかった。

御園生さんをあんなに傷つけたのに、私はたった1回のつながらない電話にこんなに傷ついてしまっている。

でも、かけられなかった。

だって、きっと、御園生さんだって私のことなんて嫌いになってるに違いない。


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