片恋スクランブル
既に冷めてしまったココアに口をつけながら、力なく呟く私の背中に衝撃が走る。
「いったぁ!!」
思わず声を上げてしまった。
鋭い痛みが背中に走り、ついでジンジン・ヒリヒリした痛みがじわじわ襲ってきた。
「コラ!」
そう怒鳴ったのは、菅谷さんだった。
ほんのり赤くなった掌を、振りながらぷぅッと頬を膨らましている。
「菅谷?」
そこにいたみんなが一斉に私と菅谷さんに注目する。
「好きなら……好きだと気付けたなら、諦めちゃダメでしょ!」
いつも明るくて、時には優しく話を聞いてくれる菅谷さんに初めて怒られて、ハッとした。
「私……」
「私だって人のこと言えないくらい臆病で意気地無しだけど、橘ちゃんとライバルしてる時は頑張ろうって思えたよ」
「菅谷さん……」
「……御園生だってあんなにしつこく、我慢強く橘ちゃんのこと想ってるの、辛かったと思うし……」
「菅谷、それ言いすぎじゃねぇか……?」
それまで黙って見ていた八木さんと小幡さんが、呆れたようにこぼす。
「いいの!大体アイツはヘタレ過ぎんのよ」
ここぞとばかりに、御園生さんへの悪態オンパレード。
でも、菅谷さんなりの優しさが溢れてる。
やっぱり菅谷さんって、すごいなぁって思う。