片恋スクランブル



新幹線のホームに、冷たい風が強く吹き付けていた。

コートの前を合わせ、フードを被る。

さすがに絹の素材のワンピースだけでは心もとなくて、肌着はヒートテッ○のキャミにして、厚地のコートを着ていたけれどそれでもとても寒かった。

足元だって発熱加工のタイツを履いているけれど、北風には全く役に立たない。

自販機を風避けにしながら、私は18:00着の『のぞみ』を待っていた。

いくら、御園生さんのためだとはいえ、浅はかなことこの上ない。

今、12月だよ?

コートにブーツの季節だよ?

ハイヒール、しかも7cm……。

もう少し、冷静な自分で支度してくればよかった。

だけど、この寒さは否応なしに今の私を冷静にしてくれた。

このまま待っていてもいいんだろうか?

御園生さんは知らない。私が今ここにいることを。

勢いでここに来てしまったけど私の顔を見るなり、逃げてしまうんじゃないのかな?

だって、顔も見たくない、電話にも出たくない相手がよ?

帰ってきた瞬間に出迎えるってどうなの?

自販機の陰にうずくまり、悶々と考え込んでしまっている。

菅谷さんは御園生さんをヘタレだって言ったけど、私の方がヘタレ過ぎ。

あんなに会いたくて、ここまで来たのに、今は会うのが怖い。

どうしようもない弱虫だ。



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