片恋スクランブル



……やっぱり、帰るべき?

っていうか、帰りたい。

顔見れない。

今なら、ここにきたことは誰も知らないし。

ムクムクと弱気な自分が起き上がる。

7cmのハイヒールが、階段へゆっくり向かう。







―――――――『好きなら、諦めちゃダメでしょ!』

ハッとする。

今ここに菅谷さんはいないのに、菅谷さんの声が聞こえた気がした。

思わずホームの方へ振り向く。

…………瞬間、突風が私の背中を押した。

バカだ……。

また、逃げ出すつもりだった?

御園生さんへの想いに向き合ったんじゃなかったの?

『好き』だと伝えにきたんじゃないの?

逃げるな!私。

改めて喝を入れて、再び自販機の横に立った。

やっぱり菅谷さんはスゴい。そばにいないのに、私に勇気をくれる。

明日お礼言わなきゃ……。

ホームの時計を見上げると、17時45分だった。

構内アナウンスが、ホームに響き渡る。



『――――間もなく、……番線に『のぞみ』が到着します…………白線の……迄……』


緊張してきた。

さっきから繰り返される、アナウンスがまともに聞こえない。

帰ってくる。

…………御園生さんに会……うんだ。

どれだけヘタレなの私。

さっきから、心臓が壊れたみたいにドキドキ鳴ってる。

頑張れ、

頑張れ、

頑張れ、私。


< 138 / 159 >

この作品をシェア

pagetop