片恋スクランブル


アナウンスが、到着の予定を告げたのはたった数秒前だったはずなのに、今度はホームに到着のベルが鳴り響いている。

視界の右端から『のぞみ』の顔が見えてきた。

あの中に、御園生さんがいるんだ。

目の前を減速しながら通り過ぎていき、徐々に乗客達の表情まで分かり始めた頃、新幹線は止まった。

アナウンスが10分間の停車を告げ、扉が開くと思いの外たくさんの人がホームへ降り立った。

出張帰り風のサラリーマンを始め、休日を満喫した大学生のグループに、家族連れ。

笑顔や、疲れた顔等色んな表情が私の前を通り過ぎていく。

開いた出口全てから、大勢の人が降りていくのを、必死になって目で追いながら、 御園生さんを探す。

嘘、分かんない。

もしかして、見逃したかもしれない。

駅の改札出口に向かう、階段やエスカレーターはホームに幾つかあった。

気付かず行ってしまった可能性だって十分ある。

どうしよう…………。

降りて、改札付近で待つべき?

迷い戸惑う私に、聞きなれた声が聞こえた。

「……舞夏ちゃん!!!!!」


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