片恋スクランブル
「今のあんたと俺の会社となんの関係がある?」
言われてみれば。
この人は私がどこの誰か知らなかったわけで……。
「……関係なかったですね」
「当たり前だ」
キッパリと言い放つ。
……バカみたい。
今の私達は、ただ、眼鏡を踏んだ人間と踏まれた人間という関係だけだ。
なんだかホッとして、肩の力が抜けた。
*
「それじゃあ、地味だろ」
私が選んだ眼鏡を一蹴して、御園生さんは別の眼鏡を手に持っては広げてみたりしている。
「あの……私の壊れた眼鏡を買いに来たんですけど」
「あんた、眼鏡は視力を補うためだけのモノじゃないぞ?ちょっとは洒落たものを着ければその地味な顔も変わるだろ」
悪気があるのかないのか、御園生さんの言葉は私にズバズバと刺さる。
……地味かぁ。
確かに、派手か地味かと言われたら、後者だろうけど。
そもそも、派手な眼鏡を着けたところで何が変わるでもないだろうに。