片恋スクランブル

「今のあんたと俺の会社となんの関係がある?」

言われてみれば。

この人は私がどこの誰か知らなかったわけで……。

「……関係なかったですね」

「当たり前だ」

キッパリと言い放つ。

……バカみたい。

今の私達は、ただ、眼鏡を踏んだ人間と踏まれた人間という関係だけだ。

なんだかホッとして、肩の力が抜けた。





「それじゃあ、地味だろ」

私が選んだ眼鏡を一蹴して、御園生さんは別の眼鏡を手に持っては広げてみたりしている。

「あの……私の壊れた眼鏡を買いに来たんですけど」

「あんた、眼鏡は視力を補うためだけのモノじゃないぞ?ちょっとは洒落たものを着ければその地味な顔も変わるだろ」

悪気があるのかないのか、御園生さんの言葉は私にズバズバと刺さる。

……地味かぁ。

確かに、派手か地味かと言われたら、後者だろうけど。

そもそも、派手な眼鏡を着けたところで何が変わるでもないだろうに。

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