片恋スクランブル



たくさん伝えたかった。

彼に伝わるまで、何度でも。

だけど、最後まで言わせてはもらえなかった。

宙に浮いていた身体は、そっと地面に降ろされた。

「御園生さ……?」

見上げると、御園生さんの顔がすぐ近くにあって、

切な気に揺れる二つの瞳孔が、私を見つめていた。

見ている私まで泣きたくなるくらい。

伝わらない?

まだ、私の想いは伝わらないのかな。

こんな風に悲しい表情をさせてしまう自分が嫌だ。

笑って欲しい。

大好きな人には、いつだって笑顔でいて欲しいのに。

八木さんには、菅谷さんがいたように。

私が御園生さんを笑顔に…………幸せにしてあげたいのに。

無理なのかな?

私じゃあ……。

「……夢じゃないの……か?」

すぐ近くでこぼれた言葉は、喧騒や風の音で危うく消えかけた。

「御園生さ……ん?」

彼の指先が、私の頬に触れた。

少し冷えた指先は、壊れ物でも扱うようにそっと優しく頬を撫でた。

「何度も見た……舞夏の夢。……夢の中ではいつも笑ってるんだ」

思い出しているのか、嬉しそうに笑う彼。

「でも、目が覚めたらどこにもいなくて……やっぱり夢だったって気付く」


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