片恋スクランブル
「あれは、結構キツイな」
自虐的に笑う彼の痛々しいくらいの表情が、さっきまでの彼の笑顔を余計儚げに感じさせた。
「夢じゃ……ないですよ」
彼の指に自分の手をそっと重ねる。
「冷たいな、手」
御園生さんの呟きにあわてて手を離す。
手袋してくればよかった。
胸元で両手を擦り合わせる。
はあっ、と吹き掛けた息は白く両手をすり抜けて消えた。
「あは。なかなか温まりません……ね」
自分の息だけで温めるのは、はなから無理な話で。
御園生さんの両手が、私の手を包み込んだ。
大きくて、温かい手。
「ごめんな、こんなところで待たせて……」
ううん。
首を左右にふる。
「平気ですよ……?」
強がりも混じっていることには、とっくに気づかれていた。
だって、やっぱり12月の空気は冷たくて、痛いんだもん。
「……帰るぞ?」
御園生さんは私の肩を抱き、ゆっくりと階段へ向かっていく。
私もヒールに気を配りながら、彼の隣を歩いていった。