片恋スクランブル
「舞夏、あれ」
顎をしゃくって、一方を示した。
その方向へ、目を向ける。
12月の19時前後の駅前は、待ち合わせをしているカップルや、タクシーやバス待ちの列に、ただ歩いている人達と様々で。
でも、そんな中で見つけた。
明らかに異質な集団を。
「あれ……」
「気付いたか?」
御園生さんも同じ方向を見て溜め息をついた。
……異質な集団。
とはいっても、たった3人なんだけど。
人混みを縫うように、早足で歩いているその3人は、さっきまで私たちがいたタクシー乗り場で立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回している。
なんで、ここにいるの?
『も……ッ……見失……ゃったじ……い~』
菅谷さんが大声で叫んだ言葉が、離れたところにいる私たちにも微かに聞こえてきた。
見失った?
まさかと言う思いが浮き上がる。
「アイツら、張ってたみたいだな……」
再び溜め息をついた御園生さんを見て、理解した。
「ホームにもいたんですか?」
信じられないけど、聞いてみる。
御園生さんは頭を掻きながら、答える。
「あー、俺が舞夏に気付いたのは、菅谷のお前の名前を呼ぶ声でだからな」
あ!
突然思い出した。
『舞夏ちゃん!!!!』と呼んだのは、確かに菅谷さんの声だった。