片恋スクランブル
「やっぱり、分かってないよ」
大きな溜め息が、目の前で落ちる。
「なにが分かってないんですか?御園生さんは覗き見とかされて嫌じゃないんですか?」
食って掛かった物言いになってしまったのは、やはり照れ隠しなのかもしれない。
だって、全然平気な御園生さんのことが恨めしいんだもの。
「嫌かどうかと聞かれれば、勿論嫌だし腹もたつよ。でもさ……」
「でも?」
どうしてこういうことになるんだろう?
私は、御園生さんに告白しに来たわけで……なんでその相手と言い合いしてるわけ?
分かっているのに、止められない。
「あー、もぅいいから!」
先にこの状態に終止符を打ったのは、御園生さんだった。
私はといえば、急に大声を上げた御園生さんに驚いて開いていた口をギュッと結ぶ。
怒った?
怒らせた……?
急に不安になる。
「……いいから。舞夏、来て」
二度目は、あえて押さえた声で御園生さんはゆっくりと言った。
幾分か冷静になった頭で、言われるまま彼の後をついて歩く。
ビルの隙間を抜けると、駅前の商店街に出た。
街のイルミネーションは既にクリスマス色で、気の早いサンタの着ぐるみが出ている店もあった。
いつもより3割り増し明るい商店街に、私の気持ちはついていけてない。