片恋スクランブル


一大決心した告白は、散々な結果だし、菅谷さんたちに覗かれていたことも、かなりショックだった。

なにより、告白の相手を怒らせてしまったかもしれなくて……。

どうして私は今、こんな陽気な雰囲気の通りを歩いているんだろうと、恨めしい気持ちで周りの人の流れをボンヤリと見ていた。

御園生さん、どこまで行くのかな?

歩き出してから、まだ一言も喋っていない。

黒いコートの背中を、じっと見つめた。

右手には小さめのボストンバック。

そう言えば、スーツ着てた。有給消化中もスーツで過ごしたのかな?

なんだかまるで、あの日の北海道の出張帰りと同じようなカッコだ。

「御園生さん……有給休暇消化中、なんですよね?」

「有給休暇消化?なんのことだ、俺、前回の九州出張の続きなんだけど」

え……?

嘘。だって……。

小幡さんが、有給休暇消化中で、行き先不明で、連絡もつかないって。

あれは、嘘?

「じゃあ、電話出てくれなかったのは……?」

前を向いて進む、御園生さんの足が一瞬だけ止まって私を振り返った。

「あのときは、会議中で……でも、かけ直すことは出来なかった。」

「ごめん」と呟いた後、再び歩き始める。

一体どういうことなの?

御園生さんは出張中だった。

電話には出られない理由があった。

菅谷さんや、小幡さんたちから聞いた話と違いすぎる。

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