片恋スクランブル
「あの、これ合わせたいんですけど」
御園生さんを無視して、店員に地味だと言われたフレームを渡した。
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
案内されてガラステーブルを囲むように置かれたソファーに腰を掛けた。
「なんだ、やっぱりそれにするのか」
御園生さんはつまらなさそうに呟いて、私の隣に座る。
長い足を組んで、背中を反らすようにソファにもたれ掛かる。
「お客様こちらをどうぞ」
度を合わせた眼鏡を渡され、鏡を目の前に置かれる。
「ほら、地味だろ」
眼鏡を掛けた私を見て、御園生さんは店員に同意を求める。
「落ち着いた雰囲気でお客様にお似合いですよ?」
そつなく褒めてくれた店員の側で、御園生さんは不服そうだった。
で。
視力が戻った所で、鏡越しの御園生さんの顔がハッキリと見えた。
……うわぁ、カッコいい男だったんだ。
クリアになった視界に映る彼はキリリと整えられた眉と、切れ長の目がスッキリとした印象の男性だった。
……八木さんが『明るくて人懐っこい和やかなイメージ』の人なら、この人はその対極にいる人だ。
強引で、クールで、容赦ない物言いをする大人の男性。