片恋スクランブル

「あの、これ合わせたいんですけど」

御園生さんを無視して、店員に地味だと言われたフレームを渡した。

「かしこまりました。こちらへどうぞ」

案内されてガラステーブルを囲むように置かれたソファーに腰を掛けた。

「なんだ、やっぱりそれにするのか」

御園生さんはつまらなさそうに呟いて、私の隣に座る。

長い足を組んで、背中を反らすようにソファにもたれ掛かる。

「お客様こちらをどうぞ」

度を合わせた眼鏡を渡され、鏡を目の前に置かれる。

「ほら、地味だろ」

眼鏡を掛けた私を見て、御園生さんは店員に同意を求める。

「落ち着いた雰囲気でお客様にお似合いですよ?」

そつなく褒めてくれた店員の側で、御園生さんは不服そうだった。

で。

視力が戻った所で、鏡越しの御園生さんの顔がハッキリと見えた。

……うわぁ、カッコいい男だったんだ。

クリアになった視界に映る彼はキリリと整えられた眉と、切れ長の目がスッキリとした印象の男性だった。

……八木さんが『明るくて人懐っこい和やかなイメージ』の人なら、この人はその対極にいる人だ。

強引で、クールで、容赦ない物言いをする大人の男性。


< 15 / 159 >

この作品をシェア

pagetop