片恋スクランブル
「舞夏、ここに入ろう」
ぼんやりしている私の肩を抱き、目の前の喫茶店へ入る。
入り口からアンティークな雑貨が並び、木目の角の丸いテーブルが幾つか並べてある一つに私を座らせて、御園生さんは真向かいに腰かけた。
「この店のココア、うまいぞ」
言って、水を運んできた店員にココアとコーヒーを頼んでくれた。
あまり待つ時間もなく、テーブルにカップが二つ置かれた音がする。
甘い匂いに惹かれて顔をあげると、ココアの横にホイップクリームがデコレーションされ、ベリー系のソースがかかったワッフルが置かれてあった。
「甘いの、好きだろ?」
目を細めて彼が言った。
「あ、ありがとうございます」
頭が混乱してよくわからない状態だったけれど、さすがに冷えた身体がその欲求を素直に示し、自然と延びた手がカップを持ち上げ、ココアを一口口に運んだ。
「甘くて、美味しい……」
微かにシナモンが香った。
さすがにカップココアとは味が違う。
「ああ、温まるな」
御園生さんもコーヒーを飲んでホッとした表情を見せた。