片恋スクランブル
「アイツらから何度かメールもらってたんだ」
御園生さんがカップの取っ手をいじりながら、独り言のように話始めた。
私は甘い匂いの誘惑にまけて、せっせとワッフルを口に運びながら、視線だけ彼に向けた。
「『仕事なんかとっとと終わらせて帰ってこい』だの、『橘ちゃん泣かすな』だの、『あんないいこはいない』だの毎日しつこくメールが届くんだから」
大きなため息をこぼす御園生さんは、疲れきった表情をしていて。
余程皆からのメールが、しつこく届いたのだろうと、少し同情してしまう。
でも、御園生さんには申し訳ないけど私はその話を聞いて、感動すらしていた。
皆が私の知らないところで、御園生さんに連絡をとろうとしてくれていたことに。
そして、そんなに心配かけてしまっていたのだと、今更ながら迷惑かけどうしの自分が情けなかった。
私は、ただ待つだけで……。
みんな、ごめんなさい。
それからありがとう。
今は心の中でしか言えないけど、きちんと伝えたいと思った。
「仕事だったから、勿論帰ることは出来なかったけど……」
「御園生さん……」
「俺、フラれたんだぞ?……そう思ってたんだから、あのメール攻撃はキツかったよ」
「……ごめんなさい」
ワッフルを食べる手を止めて、頭を下げる。
あの時、私がちゃんと話していたら御園生さんに苦しい思いさせなかったのかと思うと、やっぱり後悔しかなくて……。