片恋スクランブル




顔が火照る。

見られたくなくて、顔を伏せた。

「……最初からだよ」

え?

一瞬聞き間違いかと思った。

だから聞き直そうと顔を上げた私を、真っ直ぐに見つめる二つの瞳孔。

「だから、最初からだって」

……最初から?

「嘘!」

思わず嘘だと声をあげて言ってしまった。

「失礼なやつだな」

不服そうに睨む御園生さん。

嘘だよ。だって、それじゃあどうして協力してくれたの?

八木さんと知り合わせてくれたの?

「言っただろ?最初に……」

初めて会った時の事を思い出す。


『舞夏、俺の女になれよな』


……あの時の、あの言葉は、からかっていただけだって。

笑ってたじゃない。

本気じゃないって、からかわれただけだって、すごく腹立たしかったのを覚えてる。

あれは……

本気だったの?

嘘じゃなかったの?

「どうして……?」

どうしてよ。

嘘だと笑ったあの裏で、貴方は何を考えていたの?

八木さんと知り合わせてくれて、彼と仲良く話せるようになって、菅谷さんや小幡さん達とも親しくなれた。

結果、八木さんは菅谷さんと付き合うことになったけど。

こうして今私が前を向いて笑っていられるのは、御園生さんのお陰で。

でもその裏で、たくさん……たくさん御園生さんを傷つけてしまっていた。

私……鈍すぎだよ。

こんな私が、御園生さんの隣にいても……いいのかな。

好きだと、

甘えてもいいのかな。

「まぁた面倒くさそうなこと考えてんなぁ……」


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