片恋スクランブル

「いかがですか?」

店員の言葉に我に返る。

「あ、ハイ。大丈夫です。」

色も形もしっくりと馴染む。

これがいつもの私のスタイル。

今さら変えるのは……。

「変化を怖れていたら、人生つまんないだろ」

いちいち痛いところをつつく物言いをする御園生さんを、思わず睨んでいた。

「私は変化を望んでいないんです」

キッパリと言いきる。

「つまらない女だな」

『つまらない』

何度目だろう。この言葉で傷付くのは。

いい加減慣れても良さそうなのに。

始めて言われたのは、高校の頃に付き合っていた彼からだった。

彼とはいっても、付き合い始めて1週間でふられたから、たいした関係ではなかった。

「どうせ……つまらない女ですよ。分かってます」

「なんだ、つまらないのは嫌なんだろう?」

御園生さんの言葉に、私は彼の顔を見た。

「嫌なら、変えてみればいいんだ」

「は?」

「おい、こいつにコンタクトを合わせてやってくれ」

御園生さんは、唖然とする私など気にも止めない様子で、店員に声をかけている。

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

丁寧に腰をたおし、礼をすると店員は奥に入っていく。

「ちょっと待ってください」

「なんだ?」

「なんだじゃありません。私、コンタクトを買うなんて言ってません」

「そうだな、あんたはその眼鏡を買えばいい」

涼しい顔で、御園生さんは言う。


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