片恋スクランブル

「じゃあどうしてコンタクトを合わせるなんて?」

「俺が、俺の金で買うんだ。あんたは人の買い物にケチつけるのか?」

……屁理屈だ。

「私は帰ります。ここまで送っていただいてありがとうございました」

立ち上がり、店員に声をかけようと振り返ると、既にコンタクトを用意した店員がたっていた。

「お客様、コンタクトの準備も整いましたが……ご迷惑でなければ試してみられませんか?」

「えっ、あのっ、……はい」

わざわざ用意してもらった事が申し訳なく思えて断れなかった。

正直言うと、怖い。

今までコンタクトに手を伸ばせなかったのは、こんな小さな異物を目に入れる事に抵抗があったから。

テーブルに置かれた鏡の前で、人差し指に乗せた小さな異物、もといレンズをじっと見つめる。

「はぁ……っ、」

指先がプルプルと震えた。

「……おい、」

耳元で低い声が響く。

「ひゃっ……」

……もう少しでレンズ潰してしまうところだった。

「な、なんですかっ?」

「それ貸してみろ」

言うなり、声の持ち主である御園生さんが私の指からレンズを奪う。

「な……!?」

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