片恋スクランブル
長く細い指が私の目の端を通り、頬に触れた。
切れ長の目が、まっすぐに私を見据えていた。
動けなかった。
まるで蛇に睨まれた蛙。
射竦められた獲物。
瞬きさえ許されない威圧感。
「動くな」
短く斬り込むような言葉の刃。
沸き上がる恐れに、潤む両の目。
瞬間 ――――――、
瞳孔に何かが張り付く違和感を感じた。
「……ったぁ!」
思わず顔を覆った。
「ほら、逆も入れるからこっち向け」
有無を言わさず、御園生さんの指が私の顎を捉えて、コンタクトを近付ける。
「痛い、痛い、無理!」
彼の腕を掴み、嫌々と頭を振る。
「うるせぇな、目ェ開けねぇと口塞ぐぞ!」
口を塞ぐ????
それって、まさか?
冗談じゃない。本当にとって食われるなんて御免だ!
ピタリと動くのをやめ、渋々目を開けて御園生さんの顔を見る。
右目だけ視界がクリアで、気持ち悪い。
「よし、イイコだ」
満足そうに頷くのが見えた。
大人しく言うことを聞いたわけではない。
喰われるのだけは避けたかったから、仕方なく……だ。