片恋スクランブル
「どうだ?世界変わったか?」
問われた事に返答する余裕はなかった。
両の瞳孔に張り付いた違和感が、頭の中を不快さで充たしていく。
「……最悪です」
「バカ。目を開けろよ」
言われるまま目を開けて見た。
確かに、視界が明るく開かれた感覚。
視界の何処にもフレームが映らない。目の回りが軽い。
「変な……感じです」
正直な感想だった。
「いいんじゃね?」
「え?」
「変でもなんでも、いつもと違う自分って、なんか面白いだろ?」
おもしろい?
「いつもと違う化粧して、いつもと違う髪型して、いつもと違う服を着る。つまらない毎日を変えるきっかけって、結構簡単な事だと、俺は思うけどな?」
足を組んで、背中を反らすようにソファーに腰掛け、偉そうにモノをいう。
有名な会社の、偉そうな肩書きを持つ自信家の男の人。
いけすかない人種だけど、悪い人ではないのかもしれないと思った。