片恋スクランブル
「マイカ?」
「夏に舞うです」
へぇ……と呟き、御園生さんは優しく笑った。
「……似合ってる。そのカッコにな、」
人差し指で私の胸元を指差す。
今日初めて会ったばかりの人なのに、不思議な人。
「舞夏」
……いきなり呼び捨て?
やっぱり変な人だ!
「……なんですか?」
彼を見ずに、尋ねる。
私の意識は既に帰路へと向かっている。
「きゃあ!?」
急に手首を強い力で引かれた。
思い切りバランスを崩して、気付けば私は、御園生さんの膝の上で、抱き抱えられていた。
あわてて立ち上がろうと体を起こしたが、御園生さんの長い腕が私を抱き締めて離してくれない。
「止め……っ」
「舞夏、俺と付き合わないか?」
耳元で囁かれた声も、最初は意味がわからず、ただこの体制から逃れるべく体をバタバタと動かしていた。
……冗談じゃない、やっぱり変質者だ!
「舞夏」
「……っ、」
「舞、夏」
繰り返される、愛撫に似た呼名は次第に私の鼓膜を震わせ、脳へ運ばれていく。