片恋スクランブル
「舞夏ちゃん!カレー2つ入ったよ~!」
……うわぁ……、花田さんのバカ。
「……マイカ?」
御園生さんがそう呟くのが聞こえた気がした。
「はい……、カレー2つですね!」
半ば自棄気味に声をあげた。
お皿にご飯を盛る。
2つ、同じ位の……少し多目で。
「お願いします」
花田さんにお皿を渡して、また奥へ下がる。
八木さんはもちろん、御園生さんの事も、一度も見ることは出来なかった。
「なんだよ、普通じゃん」
彼らがカレーを受け取り、席に向かいながら話しているのが聞こえた。
「ホラな、お前の気のせいなの!」
八木さんの言葉に、「そっかなぁ」とまだ納得していない様子の声も、聞こえていたけど私は、それどころじゃなかった。
……気づかれてないよね?
三角布だし、エプロンだし、顔あげてないし。
胸がドクドクと脈打つ。
どうしてだか、気付かれたくなかった。
というか、二度と会いたくなかったのに。よりによって八木さんの知り合いだなんて。
すごく嫌な感じ。
言い表せない不快な気持ちが私の中で渦巻いていた。