片恋スクランブル


「協力してやるよ……来い!」

言うと同時に二の腕を捕まれていた。

「ちょっ……!」

この前と同じ。

人の意見なんて聞かないで、自分の思うように動く。

「行きません!」

「八木がいてもか?」

「えっ?」

驚いて御園生さんを見上げた私を見て、彼はニヤッと笑った。

「今日アイツと約束してる」

「は?」

私を掴んだ手はそのままに、御園生さんは胸ポケットから細長い紙を取り出した。
「アイツ無類の映画好きでさ、今日も付き合う約束させられてる。男の俺と行くより、彩りあっていいだろ」

「待ってください。私が行く理由はないですよね、私八木さんとまともに喋った事ないのに、いきなり映画なんて……」

戸惑う私に御園生さんは大きくため息をついた。

「満足なのか?」

「え……」

「見ているだけで満足なのかって聞いたんだ」

御園生さんの言葉に、私は返す言葉がなかった。

「私は……」

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