片恋スクランブル
「橘さん、コレ見に行くんだけど、嫌じゃなかったら付き合わない?」
映画のチケットを見せられ、私は即座に頷いた。
彼に嘘をつかずに一緒にいられることが嬉しくて。
私は二人の後を少し離れてついていった。
……なんだか、嘘みたい。
今こうして八木さんの側にいること。
八木さんは御園生さんに、今から見る映画について語っている。
監督の事や、俳優の事など細かく話す様子を見て、無類の映画好きでというのは本当なんだと思った。
「今日は付き合わせちゃってごめんね」
「いえ、……楽しかったです」
映画を見た後、少し遅い夕飯をとるべく、私達はファミレスに来ていた。
カレーを食べながら、八木さんは映画について熱く語っている。
……ここでもカレーなんだ。
無類の映画好きだけでなく、無類のカレー好き?
こだわりが強い八木さんを見て、つい笑ってしまう。
「なになに?」
映画の話に夢中になっていた八木さんが、私を見て言った。
「いえっ、あの……カレー本当に好きなんだなって……」