片恋スクランブル
「わ、私も帰りますね」
続いてしまう沈黙がなんだか居心地悪かった。
「……送る。ここまで連れてきたの俺だし」
御園生さんはため息ひとつついた後、私の隣に立ってタクシー乗り場を指差した。
「大丈夫です。バスで帰れますよ?」
「ヒール、キツいんだろ?タクシーで帰ればいい」
有無を言わせない強引さには慣れてきたけど、さっきからいつもと違う気がするのは気のせいなのかな?
「そうだ!携帯ちょっと貸して」
「え?」
自分の携帯をポケットから取り出し、左手を私に向ける。
どうしてかいつも逆らえない……この人の言葉には。
言われるままに、バッグから携帯を取り出して彼に渡した。
「俺のアドレスだから、何かあったらメールして」
わたしの携帯に表示されている御園生さんの携帯のNoとアドレス。
……なにもないと思うけどな。
そう思ったけど、口に出さずに黙って携帯を受け取った。