片恋スクランブル

「眼鏡外して、濃い化粧しないと変われないんだと思ってました……」

でも、そんなの本当の私じゃない気がして嫌だった。

「そういうお化粧もありだと思うよ。……でもね、女性にとってお化粧ってさ、自分に自信をつけたり、気分を少し明るくするためのものだとも思うのね」

菅谷さんは道具をポーチにしまいながら、話してくれた。

「いつもの自分のままで、チーク一つで明るく可愛く笑えたら、嬉しくない?」

「……はい」

「気分が上がれば、仕事も恋愛もいつもより、頑張れる気がするんだ」

「……分かる、気がします」

確かに、暗い気分のままじゃ頑張る力は沸いてこないかも。

「知ってる?女にとって一番の化粧は『笑顔』だってコト」

「笑顔?」

「そう。素っぴんだろうが、汚れてようが笑顔一つで、輝いて見えることもあるんだから!」

「お化粧してる顔より?」

「当然!」

ピースを作り笑った彼女は、とても可愛らしかった。

「で……御園生とはどうなってるの?」

トイレを出ようとしたところで、急に腕を捕まれて菅谷さんに引き寄せられた。

「は?」

「八木くんから聞いてるよ。御園生がベタ惚れな女の子がいるって。」

どこからそんな誤解が生まれたんだろう?

驚きのあまり、声も出せない私はただ必死で首を左右にふった。

「ちがうの?」

残念そうな菅谷さんには悪いけど、それは私じゃないよ。

「あの……御園生さんは、私が八木さんに片思いしていることを知って、なぜか協力してくれてるみたいで」

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