片恋スクランブル
「えっ、橘ちゃんって八木くんのファンなの?」
あ、やば。私ってばなに告白しちゃってるの?
恥ずかしさで顔がカッと熱くなる。
「八木くんかぁ……アイツはねぇ。優しすぎるからね……優柔不断だし、ダメな女に引っ掛かりやすいし、鈍いし、」
黙って聞いていると、まるで八木さんの欠点のオンパレード。
でも、口調は呆れてるとか、貶しているというより……。
「菅谷さん、もしかして八木さんのこと?」
好きなんだ。
そう。菅谷さんの言葉は、ダメな所もあるけど、なにより愛しい……ってこぼしてるみたいに聞こえたから。
「えっ?やっ、違うよっ。まさか、なんで私があんな優柔不断男を……」
真っ赤な顔で慌てる菅谷さんの様子に私は苦笑するしかなく。
「やっぱりライバル多いなぁ」
大きなため息と同時に、こぼした言葉は、自分の思いを認めたと同じ。
菅谷さんは照れ笑いしながら言った。
「じゃあ、私達ライバルね」
サッと出された手に戸惑ってしまう。
「わ、私はそんなライバルとか……」
「あら、八木くんのこと好きなんでしょ」
「憧れてます……でも、付き合いたいとか大それたこと考えてる訳じゃなくて……」
「こらっ!」
叱咤と同時にギユッと手を握りしめられた。
「自信持って!私はあなたとなら正々堂々と、闘えると思ったんだからね?あそこにいる香水臭い女に八木くん渡す気なんかないし」
「は……い」
勢いに圧倒されてしまった。
なんてカッコいい女なんだろうって。